「世界思想」3月号を刊行しました。
今号の特集は「末期症状を呈する日本のメディア」です。
ここでは特集記事からPart2【中国の「メディア工作」と危機意識なき日本】を
ご紹介します。

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 SNSの力を使って自国にとって有利な展開を作り出そうとする大規模な工作が、およそ10年前から中国共産党によって行われている。

 対米工作はもちろん、それ以上に対日工作が進んでいるとみなければならない。しかし、その全貌が見えてこない。危機意識が個人から国家に至るまでのあらゆる基準において低すぎる。スパイ防止法さえない日本の姿である。

 中国の中長期戦略目標は、「中華民族の偉大な復興」である。2035年までに社会主義現代化実現(共同富裕社会実現)、そして49年には社会主義現代化強国の実現。100年計画である。台湾を奪還し、米国以上の国力を持って世界に影響力を行使しうる国となる、すなわち米国に勝つということである。

 この戦略目標を達成するためには日本工作が焦点になるのは必然だ。1950年代初頭から党を挙げた対日工作が展開された。日本を動かすためには日本共産党、日本社会党などとの連携はしても、中心的な政界工作は自民党だった。そして公明党対策に力を入れてきた。その結果、日中国交正常化と平和条約締結を実現したのだ。

「戦狼外交」の一躍担うネット戦略

中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』傘下のタブロイド紙『環球時報』。ネットと連動し活発な対日工作を展開しているとされる

 米中対立が激化する中で対日工作は今、新たな次元に入っているとみていいだろう。その一翼を担うのが「ネット戦略」である。

 中国共産党がネットの力に目覚めたのは2019年、香港での民主化デモの時と言われる。共産党は、「黒幕は米国だ」と断言し、「環球時報」などのメディアで報道し、ネット空間にそれを「裏付ける」ショート動画を拡散した。多くの中国人が、その「真相」を知ったと思い、世論が反発一色に変わったという。

 そして2020年の春、コロナ禍が全世界を覆ったころ、中国が奇妙な主張を展開し始めた。同年3月12日、中国外交部報道官の趙立堅氏がツイッターで、「武漢に伝染病をもたらしたのは米軍かもしれない。透明性を確保せよ!データを公開せよ!アメリカは我々に説明する責任がある!」と投稿したのだ。

 連続して、裏付けるかのような動画が氾濫した。結果、中国人の多くは現在まで、アメリカ起源説を信じているという。「 戦狼外交」の一翼をネットが担ったのだ。

 中国のネット工作は日本に上陸している。影響は日本人の身近なところにまでおよんでいるといえよう。2021年夏ごろを境に、日本国内に赴任する中国の大使や総領事たちが、SNSで戦狼的な情報発信をするようになったのだ。

 昨年(2024年)10月の衆議院選挙をめぐり、中国の薛剣駐大阪総領事がSNSでれいわ新選組への投票を呼びかけていたことが発覚した。

 薛剣氏の投稿は、比例代表において「全国どこからでも『れいわ』と書いて投票してください」と呼びかけるものだった。

 さらに、れいわ新選組代表の山本太郎氏による街頭演説の動画も引用し、自身の支持理由を次のように述べていた。

 「どの国も一緒だけど、政治がいったん歪んだら、国がおかしくなって壊れ、特権階層を除く一般人が貧乏となり、とうとう地獄いきなんだ」

 日本政府はこの投稿について「極めて不適切」とし、中国側に対し投稿の削除を申し入れ、投稿は削除されたが、国会でも重大案件として取り上げられたのである。

在日中国人社会の変化と対日工作の拡大

 日本の「現状」を見ると、極めて工作しやすい状況が広がっていることがわかる。

 日本は今、中国の近隣国では最大規模に近い70万人以上(日本国籍取得者を含めれば100万人近い)の中国人社会を抱えている。そして中国人観光客の旅行先として人気が高い。

 

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