「世界思想」9月号を刊行しました。
今号の特集は「2025年参院選 塗り替わる日本の政治地図」です。
ここでは特集記事からPart1【国民・参政…「新興保守」の躍進】を
ご紹介します。
減税政策で脚光浴びる国民民主
参院選での自民13議席減、公明6議席減の与党大惨敗とはいえ、選挙協力した立憲民主党と共産党は1人区の17選挙区で候補一本化で立憲は現状維持、共産は4議席減だった。ではどの政党が伸びたのか。「年収103万円の壁引き上げ」と「ガソリン暫定税率廃止」で国内政策のイニシアチブを握った国民民主党は、14増の17議席に躍進。東京選挙区では唯一2議席を獲得した。比例代表では自民党に次ぐ762万票で、参政、立憲と並ぶ7議席を獲得した。その象徴は選挙区で、1人区では自民と立憲の一騎打ちが多かったが、定数6+1(補選分)の東京では2人ずついた自民と立憲の改選現職が両党とも1人ずつ落選したのに、国民民主党のみ複数当選。都議選を制した「都民ファーストの会」支持が国民民主に反映された格好だ。
国民民主党は元々、2016年の東京都知事選に勝利した小池百合子知事が代表の「希望の党」が「前身」だが、玉木雄一郎代表と榛葉賀津也幹事長体制で、「自民党の左翼リベラル化」で、保守層の受け皿の一つに。「都民ファ」との連携や、「手取りを増やす」政策の他にも憲法改正に前向きで共産党との「共闘」を拒否し、現実的「保守寄りの中道」路線と認識され支持率も急上昇した(但し、不倫報道の山尾志桜里氏や反原発の須藤元気氏らの擁立が保守層に忌避され、大躍進へのブレーキに)。
青年層と現役世代の支持集めた参政党
さて、最も顕著な新興勢力としては参政党が比例7、選挙区7で14議席獲得と、堂々たる国政政党に躍進した。しかも比例の得票数では742・5万票と立憲を上回る票を得たことは大きい。選挙区では複数人区で議席を獲得し、埼玉・神奈川・愛知では公明党現職が落選する中で新人が当選。東京では自民の鈴木大地元スポーツ庁長官に次ぐ2位の得票数( 66 ・9万票)でさや氏が当選した。
読売新聞・NHK合同の出口調査(20日・20万人対象)によると、比例代表の投票先は18歳~20代では23~24%で国民民主と参政がほぼ互角で2トップ。
30代は参政が23・2%、国民民主が14・2%、3位は自民12・6%だった。
40代では参政18・7%、自民16・1%、国民民主14・2%、50代では自民20・6%、参政15・3%、国民民主11・7%、60代では自民26・3%、立憲15・8%、参政11・6%、国民民主8・8%と、50代以降は自民が強さを見せている(70代以上は自民が36・9%)が、立憲がトップ3に躍り出るのは60代以降だ(NNN報道)。
また、同調査で無党派層の投票先として、①参政15・6%②国民民主15・1%③自民12・9%④立憲12・6%⑤れいわ7・8%⑥維新7・2%⑦日本保守6・5%の順であり、自民党が敗れたのは立憲・れいわ・共産などの左翼勢力ではなく、「無党派層の保守化」だったことが窺える。
参政党は元々、「日本の国益を守り、世界に調和を生む」理念を掲げ、「参加型民主主義」を標榜し「政党DIY」として結成準備されたが、結成時に当初の「ボードメンバー」の多くが離れた。しかし、地道なユーチューブ配信やタウンミーティングなどを通し、保守系地方議員のネットワークを作り、全国に支部を拡大した。さらに、「日本人ファースト」や減税を訴える効果的なSNS発信を選挙に活用することが、今回の一大旋風とも言える躍進の原動力になったと言えよう。