日本国と日本国民を守るために「戦後レジーム」からの脱却が今ほど問われているときはない。もはや「戦後」とは到底呼ぶことができない地殻変動が世界を覆っているからだ。ロシアのウクライナ軍事侵略、中国の超軍拡・超独裁・超利己的経済活動はもはや国際法も国家平等原則も存在しない恐るべき「ジャングル世界」を現出せしめた。加えて人民の生き血を吸って核・ミサイル開発に狂奔する北朝鮮やイランなど「悪の枢軸」が自由を簒奪しようと策動している。これらは「戦後」の終焉を如実に物語る。
それにも関わらず左翼勢力は、やれ平和憲法を守れとか、やれ武器輸出をするなとか、「戦後体制」にしがみ付く時代錯誤の言動を繰り返している。良識ある国民は惑わされてはならない。「戦後レジーム」からの脱却は現行憲法を葬り去り、真に日本国にふさわしい自主憲法としての「日本国憲法」の制定をもって具現する。ゆえに我々は憲法改正を訴え続けていかねばならないのである。
経済安保活用法で情報漏洩を防止へ
しかしながら、それを待たずとも一歩ずつであっても確実に「戦後体制」を打破していかねばならないこともまた、現実的には必要だ。その一つが今国会で成立した「重要経済安保情報保護・活用法」いわゆるセキュリティー・クリアランス(適格性評価)法である。安全保障に支障を及ぼす「重要経済安保情報」を新たに指定し、この情報を扱えるのは資格を持つ人に限る。国家・国民の安全にかかわる情報を易々と「悪の枢軸」に流してはならないからだ。当然の理である。
かねてから経済安保が問われてきた。安全保障の裾野が経済分野に急速に拡大し、国家・国民の安全を経済面から確保する必要が焦眉の急となってきたからだ。その取り組みは安倍晋三内閣から始まり、2019年に内閣官房の国家安全保障局に経済担当部署が設けられ、岸田文雄内閣は21年に経済安全保障担当大臣を置き、22年に経済安全保障推進法を制定した。セキュリティー・クリアランス法はその制度運用の法制である。
欧米自由主義国の主要7カ国(G7)はとっくの昔に経済安保情報を保護する制度を設けている。平和ボケの日本だけが怠ってきたのだ。海外企業は機密を含む技術の共同開発に日本企業を加えることに躊躇してきたが、同法制定によってこの壁も取り除かれ、日本の国際競争力の強化にもつながる。経済紙などはそう評価している。
もとより、そうした側面もある。だが、同法は情報の漏洩を防ぐ「戸締り」を強化するだけの話であって肝心の情報を盗みに来る「泥棒」については無罪放免にしている。これは看過できない政治の不作為である。
想起すべきは共産中国が20年以上も前から国を挙げて「泥棒」づくりに血道をあげてきたことだ。胡錦濤時代の1999年に「西側軍事科学技術の収集利用に関する計画」を作成し、情報収集機関を4000団体も設立した。全国華僑工作会議で科学者やビジネスマン、留学生、旅行者らあらゆる階層の華僑、華人に情報収集を命じた。
習近平時代の2015年には「国家安全保障法」を制定し、国民には国家安全当局者の命令・指示に従うこと、中国企業には政府の要請に応じて情報を提供し、アクセスすることを義務付けた。16年には「科学技術・経済・軍事において機先を制して有利な地位を占め、将来の戦争の主導権を奪取する」との軍民融合戦略方針を決め、国家総動員のスパイ体制作りを一層、推進した。
さらに17年には「国家情報法」を制定し、国民に国家の諜報活動を支援する義務があるとし、諜報機関は関係機関や組織(企業など)、国民に対して必要なサポートや支援、協力を要求することが許されると規定した。全ての中国人がスパイにさせられるのだ。それに伴って世界で中国スパイ事件が頻発し「中国人を見たらスパイと思え」と米国のトランプ氏は現職大統領時代に忠告している。