同性の「事実婚」に法的保護

 

 宇都宮地裁真岡支部は9月18日、米国で結婚し長期間同居したが、同性パートナーの「不貞行為を機に関係が破綻した」として、30代女性が元パートナー女性に対し630万円の損害賠償を請求した訴訟において、「2人は(男女の)事実婚(=内縁)に準ずる関係であった」とし、「法的保護の対象になる」との判決を下し、被告女性に対し慰謝料として110万円を支払うよう命じた。

 また判決では、憲法24条が婚姻を「両性の合意のみに基づく」として、同性婚反対の立場に立つ人々の「拠り所」としてきた解釈とは真っ向から対峙する、「憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず、同性婚を否定する趣旨とまでは解されない」との見解を示した。

 判決理由について、「事実婚は男女間を前提にしてきたが、諸外国で同性婚が認められ、日本の自治体が同性カップルを公的に認証する制度を作るなどの社会情勢の変化を踏まえ、同性カップルでも一定の法的保護を与える必要性は高い」(中畑洋輔裁判官)と解釈。この観点に照らせば、「実態から事実婚と同視できる関係であれば、不法行為に伴う法的な保護を受けられる」とし、約7年間同居し、米国で結婚証明書を取得した事実に鑑みれば、「男女間の事実婚と変わらない実態を有する」と判断したものだ。

 

 この判決を受け、南野森・九州大教授は「同性カップルの関係を男女の内縁関係と『同じ』ものとは言わず、あくまでもそれに『準じた』ものとしている」とし「同性婚についての憲法判断を正面から論じることを課題とはしておらず、ただ、同性カップルの関係が男女の内縁関係に『準じた』ものとして扱われるべき場合があることを認めたにすぎない」ものの、「本判決は同性婚禁止説を否定し、したがって同性婚許容説に立つ、日本の判決ではおそらく初めてのものである」と解説している(9月21日付ヤフーニュース)。

 ただし、真岡支部訴訟事案の場合、「米国で結婚」という「法的重み」が「事実婚に準ずる」という判断を引き出したもので、「婚姻」の問題そのものよりも、カップル関係が壊れた法的救済という民法上の意義の方が強いと言うべきだ。

 

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