米国で注目を集めていたある裁判に6月4日、連邦最高裁判所は判決を下しました。

 米コロラド州でケーキ店を経営するジャック・フィリップス氏が2012年、男性カップルから同性婚のウェディングケーキ作りを依頼されますが、キリスト教の信仰を理由に拒否しました。

 コロラド州の州法では、人種をはじめ性的指向に基づくサービス拒否を禁じていたため、男性カップルから州法違反として同州人権委員会に訴えが挙がります。

 州人権委員会はフィリップス氏に「同性婚のウェディングケーキ作りを拒否してはならない」と言い渡し、コロラド州裁判所も州人権委員会の主張を支持しました。フィリップス氏はこの判決に対し、州人権委員会を相手に起こしていたのが今回の裁判でした。

 

 連邦最高裁判所は、「州人権委員会は宗教に対する敵意を示しており、アメリカ合衆国憲法が保証する信教の自由に反している」として、フィリップス氏の「表現・信教の自由の侵害だ」とする主張を支持しました(判事9人のうち7人が支持)。

 アンソニー・ケネディ判事は、同性愛者の権利を擁護しつつ、「同性婚に反対する宗教観や哲学的信念は、表現の自由として守られる」と言及しています。

 判決は、同性カップルへのサービス提供をめぐるその他の訴訟では、異なる判断が下される可能性を示唆しました。

 

 米国では2015年6月、連邦最高裁判所の判決によって全米50州で同性婚が合法化されました。信教の自由を建国の理念とする国で、特に2010年代に入り、結婚を男女間のものと信じるキリスト教徒の事業者が、同性愛者から訴えられるケースが相次いでいます。

 同性愛者や同性婚を推進してきた勢力は、同性合法化を「同性カップルに結婚する権利を付与するだけで、他の人々には一切影響を与えない」などと主張し、同性愛者に寛容な社会の実現を訴えてきました。

 しかし、同性婚が合法化された米国に現れたのは、伝統的な結婚や家族のあり方を支持する人々の、信教の自由、言論の自由を否定し、同性愛や同性婚に対する考え方の相違や批判を一切許さない、極めて不寛容な風潮だったのです。

 

 自分たちの権利の拡大のために他者に寛容さを要求する一方、自分たちに反対する人々には徹底的に不寛容さを露わにする。米国では「宗教迫害」とも呼べる風潮が高まる中、今回の判決を機に、より建設的な議論が展開されることが期待されます。

 日本においても同性婚合法化を推進する声が挙がっていますが、この点について、次回論じてみたいと思います。

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