※写真は中国広東省大暴動(2011 youtubeより)

シナリオとおりに事が進む全人代 。議案や予算が否決されたことは一度もなし。

中国で3月5日から開かれていた全国人民代表大会(全人代)が、15日に閉幕しました。全人代とは中国の憲法で「最高の国家権力機関」と位置付けられる大会で、毎年3月に開かれます。全国の自治体や軍部からの代表者約3000人が集まり、今後1年間の予算や立法、基本政策などが議論されます。日本ではよく、「日本の国会に相当する」会議と説明されています。

しかし全人代の実態は、日本の国会とは全くかけ離れたものです。シナリオはすべて事前に準備され、大会中に本格的な議論が行われることはありません。実際に、これまでの全人代で、提出された議案や予算が否決されたことは一度もありませんでした。つまり全人代とは事実上、大会開催までに水面下で激しい権力闘争が行われ、その結果として打ち出された方針を確認する場になっているのです。

 

習近平国家主席への権力集中が進行。水面下での激しい権力闘争。国民への弾圧強化も。

中国では権力闘争の実態が表に出ることは一切ありません。それは1989年の天安門事件 [1]の際に、権力闘争の内容が明るみになったことで学生の民主化運動が起き、政権転覆の危機に瀕したという経緯に基づいています。

[1] 北京の天安門広場に学生が集結して民主化デモを行ったところ、中国軍が無差別発砲や装甲車で轢き殺すなどして多数の死傷者が出た事件。民主化を容認する胡耀邦元総書記の死がきっかけとなった。死者数は中国の発表では319人だが数万人という説もある。遺族の中には今も監視状態に置かれている者がいる。

今のところ今回の全人代の発表で注目すべき点は以下の4つです。

① 習近平国家主席への権力集中がさらに進んだこと
② 経済成長の目標が下がったこと [2]
[2] 経済成長率の目標は、14年が7.5%前後、15年が7%前後、16年が6.5~7%、今回は6.5%前後となった。

③ 国防費が7%前後増えたこと [3]
[3] 日本円で約17.2兆円。日本の防衛費5.1兆円の3倍超となる。

④ 国内の治安対策費が強化されたこと(具体的な数値は不明)

 

見えない中国経済低迷の打開策。国民の不満は“全国で暴動発生”という現象で現れる。

これらのことから分かるのは、習氏が中国経済の低迷を打開する案を全く打ち出せていないということです。中国では経済の成長率が下がれば大量の失業者が生まれます。すると中国では、選挙で政治家を審判する方法がないため、全国で多くの暴動が発生します。こうした状況では、国家主席といえども、権力闘争で不利な立場に立つことになってしまいます。

習氏は経済成長が見込めないため、権力の集中と内外の強硬路線で政権を維持しようとしています。中国国内では今後も厳しい弾圧が続くでしょう。また、対外的な強硬路線がさらに強化されるはずです。今回の全人代は、これらのことを如実に示しています。

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