米国大統領選は、大方のメディアの予想を裏切ってドナルド・トランプ氏の勝利に終わった。日本の大手メディアもまた、米国の同業者からの情報を真に受けてか、予測を誤ってしまった。

 米国大手メディアの選挙戦報道はどうだったのだろうか。筆者は昨年11月29日から12月2日までワシントンを訪問した。そこで得た情報は日本で聞いていたものとは大違いだったのである。

 私たちが話を聞いたのは、米国下院外交委員長エド・ロイス氏と、同じく下院外交委員会アジア太平洋担当小委員長のマット・サーモン議員からであった。特にサーモン議員からは、下院外交委員会室でスピーチを伺った。そのポイントは以下の通りである。

 「オバマ大統領のリバランス政策は掛け声だけで実際は何もやってこなかった。それが北東アジアの真空状態を作り出す原因となった。それで中国は南シナ海、東シナ海に浸出して来た。中国は米国を『張子の虎』と思っている。

 また、中国の通貨政策に対してトランプ氏は非常に不満を抱いている。中国の覇権的攻勢をいつまでも黙認できない。日本、韓国、台湾…等の同盟国と協力して食い止めなければならない。そこで米国が指導力を発揮することが重要である。

 トランプ氏は、明確な態度で変えてくれると思う。北朝鮮の核開発は確実に進展してきている。その脅威を深刻に捉えないと同盟国は大変なことになる。安倍晋三首相と朴槿恵大統領の慰安婦問題を巡る日韓合意は実によくやった。今後日米韓の連帯がますます重要になる。

 トランプ氏は、ロシア・プーチン大統領との関係も改善したいと思っている。トランプ氏が大統領に就任したら、世界全体として大きな変動があると思う」ざっと以上のような内容であった。

 私たちは、東アジアの安全保障について、特に対中国の外交・経済・軍事政策において、ヒラリー・クリントン氏の方がトランプ氏より確かだと思っていた。しかし、それは完全な誤解であった。勿論その原因のひとつとして、大続領選時におけるトランプ氏の過激な発言があったことは否定できない。しかし、その部分だけ取り出し強調して伝えた米国大手メディアは、反トランプの旗印の下、米国国民にクリントン氏への投票を誘導すべく、真実と公平さを欠き、結果として、世界の人々まで誤った方向に導こうとしたのではないか、と言わざるをえない。

 例えば、クリントン氏支持の強い地域を中心として支持率調査を行ったり、選挙後、反トランプのお金持ちが、人々にお金を払って「反トランプデモ」に出てもらい、それをメディアが大きく取り扱ったというようなことまでワシントンで聞いた。

 結局、トランプ氏はSNS(ソーシャルネットワークサービス)を使って大手メディアに勝利したことになる。米国民も大手メディアより、SNS情報をより信じたことになる。米国のみならず日本の大手メディアにも猛省を促し、安倍総理とトランプ大統領の世界平和に向かうタッグに大いに期待したい。

< 2月号 巻頭言「羅針盤」より > 

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