世界思想6月号を刊行しました。 特集「なぜ共産主義は今も問題か」の一部をご紹介します。

共産主義とは何だったのか?

 「共産主義って何?」と冷戦を知らない今どきの若者はピンと来ないだろう。ちょっと歴史で習っても「過去に終わった思想を、今さら知っても…」との声が聞こえてきそうだ。

 だが、20世紀以降、共産主義は私たちの「自由と民主主義を基軸とする陣営」と勢力を2分した体制であり、今も存続する一方、私たちの内なる精神文化基盤を破壊する「文化共産主義」勢力の浸透も看過できなくなっている。

 こうした人類に「災厄」をもたらした共産主義思想はなぜ登場しなければならなかったのだろうか。

 いつの時代にも人間は幸福を希求してきた。にもかかわらず、社会的格差や不平等は存在してきた。多くの場合、社会でその「不幸な人々」の受け皿となってきたのは、宗教や慈善団体などの「善意」だった。

 人類の歴史は、王の専制(一人の自由)から民主制(多数者の自由)へ移行してきたように、自由を求めてきた歴史だと捉えた(ヘーゲル)。

 しかし、人間の善意が届かず怨みに燃える人々の情念は、一斉に「社会改良」という制度変革に向かうことになった。いつしか「神は人間がつくり出した偶像だ」という主張も現れた(フォイエルバッハ)。すると「自由よりまず平等を」と「私有財産を廃止」する体制として初期共産主義は登場した。

 やがて産業革命が起こり、資本家と労働者の格差・対立に目を付け、資本主義を打倒する政治理念として共産主義理論を「完成」させたのが、マルクス・エンゲルスだった。20世紀の「革命による資本主義打倒」の結果、共産主義体制は1億6千万人もの犠牲者を生んだ。

 歴史的に共産主義形態は、
①コミンテルンなど「国際共産主義」
②共産主義国家樹立をめざす「国家共産主義」
③体制より文化・伝統(最小単位が家庭)を断絶させる「文化共産主義」
――の三つに区分できる。

 体制共産主義が退潮する一方、宗教や文化伝統を破壊する文化共産主義も、ベースはマルクスで、その責めは紛れもなくマルクス主義が負っている。マルクスは間違ってないと居直る経済学者も残存するが、歴史の徒花(あだばな ※)であるマルクス主義の背景にある動機と本質を明らかにし、克服する道を提示することが今こそ必要なゆえんだ。 ※ 咲いても実を結ばない花。

(「世界思想」2017年6月号より転載)

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