世界思想9月号を刊行しました。今号の特集は「席巻する”LGBT”」です。

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【特集Ⅰ】東京都「LGBT」条例制定の動きとその影響

L(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシュアル)T(トランスジェンダー)という「性的少数者の権利」として「性的指向への理解」が学校教育にまで急速な広がりを見せている。彼らの人権は守られるべきだが、その過剰な「配慮」が社会との齟齬を生むリスクもある。背後に社会秩序破壊の文化共産主義が存在することも看過してはならない。

 

「五輪の目玉」にと躍起

 

  東京都は5月11日、性的少数者への差別やヘイトスピーチを禁じる「人権尊重の理念実現のための条例(仮称)」の枠組みを明らかにした。小池百合子知事は同日、記者会見で「(東京五輪・パラリンピック開催の)2020年に向け、近年注目される新たな人権課題にも向き合う条例にしなければならない」と説明し、「五輪憲章では、人種や宗教、性的指向などあらゆる差別の禁止を掲げている」として、条例制定の意義を強調したのである。

   明らかにされた条例案では、「東京2020大会後も見据え、首都東京が条例で宣言する」と意気込み、「ホストシティにふさわしいダイバーシティ(多様性)を実現」としている。条例案には解消すべき差別として①性的マイノリティ(LGBT等)を理由とする差別のない東京②ヘイトスピーチ(本邦外出身者への不当な差別的言動)のない東京――の実現を挙げている。そして啓発や教育で理解の促進を図ることと差別の解消は車の両輪であるとして、企業等と協働したキャンペーンを活用することを明示している。

 

都道府県で初の条例危険な全国波及意欲

 

 加えて都は、都道府県として初めてLGBTにスポットを当てた条例となることを強調しており、あたかも全国の自治体よ、続けといわんばかりである。「広域自治体かつ首都である東京が、LGBTへの理解促進に本腰を入れることで、区市町村はもとより全国に波及」するとの表記もある。

   続いてヘイトスピーチを抑止する措置も条例に盛り込み、公的施設の利用制限や事案の公表などを規定するとしている。さらに、表現の自由にも配慮する必要があることから、有識者、学識経験者らで構成する第三者機関を設置して、ヘイトスピーチにあたるかどうかの判断に反映するという。

   罰則規定について問われた小池氏は、「国際都市として差別は許さない姿勢を示すのが第一」と述べるにとどまっている。今後、9 月開会予定の都議会への条例案の提出を目指すことになる。そして可決された場合、条例の一部を指向しつつ第三者委員会の設置等の体制を整備して、来年4月には全面施行に持っていくという。

 

   わが国では「LGBT法連合会」なる団体が、「先進国」と同等のLBT差別禁止法制定を求める活動を展開している。2016年1月に生活者ネット主催で東京当局とLGBT関係者との間で意見交換会が都議会で開催された。

   国会ではLGBTに関する課題を考える超党派の議員連盟が結成され、LGBT法連合会に突き動かされるような形で議員立法の動きが始まった。同年2月には、学生と国会議員の意見交換会が開催されている。

   また昨年の衆院選前に「LGBTをめぐる課題に関する立候補(予定)者の政策と考え方に関する調査のお願い」を実施し、10月18日付で調査結果の確定版を公表したのである。

 

 LGBT法連合会は6月8日、声明を出した。「東京都オリンピック憲章に謳われる人権尊重の理念実現のための条例(仮称)に対するLGBT法連合会の考え」だ。その中で、一定の評価はするものの、差別やハラスメントの抑止や、差別やハラスメントを受けた人の救済や回復につながる施策が記載されていない、と指摘している。今後も都条例制定に深く関わってくるだろう。

   この団体のホームページには、彼らが作成した『性的指向および性自認を理由とする私たちが社会で直面する困難のリスト』という内容がある。例えば、リスト項目の「子ども・教育」の分野では、「学校の制服や体操服などが戸籍上の性別で分けられたため、苦痛を感じ、不登校となった」「男女で分けた授業や種目、体育祭、部活、合唱コンクールにおいて、性自認と戸籍性の不一致の為に自分のやりたいことを選択できなかった」「学校行事において男女で色分けしたり、役割を決めていたりするため、自分が望まない色をあてがわれ、好まない役割を担わされた」、また「学生証に性別欄がある」「卒業証明書・卒業見込み証明書や成績証明書に性別欄がある」といった性別欄の記載があることで性同一性障害であることが知られ、不快な思いや不利益を被ったなど60項目を挙げている。

 

差別解消の名の下で全体を崩してはだめ

 

   八木秀次・麗澤大学教授はこれらのリストについて、「ここまで問題にされると社会全体が崩れてしまうものも混在している。性的少数者に対する『差別』には解消すべき不当な差別と、その差別を解消するという名のもとに全体を大きく崩してしまうものがある。それらを分けて考える必要があると思う」(平和政策研究所分析レポート、2016年3月10日)と指摘する。

  都議会自民党は6月5日からの第2回定例会で、代表質問において都の条例案について触れ、次のように述べている。

  「条例の制定はあまりにも拙速といわざるを得ません。我が国と欧米諸国では、人権尊重に係る歴史と社会的背景が大きく異なります。したがって、規制による差別解消ではなく、まず人権に関する相互理解を促進すべきというのが我が党の考えです」

 

 この条例案の持つ重大性を考えれば、確かに東京都の動きは拙速にすぎる。そして「先進国」である欧米諸国と日本は、同性愛に対する対応が確かに違ってきた。不当な差別の解消は当然だが、社会(共同体)全体を壊してしまうようなことがあっては元も子もない。性的指向・性自認の問題は性倫理・性道徳に直結し、それは家族のあり方、社会のあり方の基礎を揺るがすことになりかねないのである。都議会自民党の意見は真っ当と言えるものである。

  この問題の深刻さは、LGBTの差別解消を切り口に、社会と国家のあり方を根本から崩壊させようとする革命的イデオロギーが潜んでいるということにある。推進する中核リーダーがどのような思想を持っているのか、慎重に見極めなければならないのである。

 


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