世界思想12月号を刊行しました。今号の特集は「コロナ禍で広がる『マルクス幻想』」です。
ここでは特集記事の一部 【資本主義は悪なのか】 についてご紹介します。
マスメディアの見立てでは、「経済格差の克服」の観点からもマルクス主義経済に再び注目が集まっている、という(NHK『100分de名著』など)。その「旗振り役」である斎藤幸平・大阪市立大准教授は、「成長」を目指す経済活動を「諸悪の根源」と決めつけ、その解決策をマルクスの『資本論』再解釈に求めているのだ。
「成長」と「分配」
岸田首相率いる自民党の政策パンフレットは「新しい資本主義」を掲げ、「分厚い中間層を再構築する」としている。キーワードは「成長」と「分配」。大胆な危機管理・成長投資を行い、分配で所得を増やし、消費マインドを改善させて経済成長を軌道に乗せる、という考え方だ。
特に野党は「成長よりまずは分配せよ」と叫ぶ。しかし、金持ちから税金を取り、低所得者に分配するというのは、「脱成長経済」つまり、「みんなで一緒に貧しくなろう」という発想につながる。
しかしここで、冷静に考慮すべきは、日本の少子高齢化と人口減少という難題に直面していることだ。