「世界思想」3月号を刊行しました。今号の特集は「バイデン政権の1年」です。
ここでは特集記事の一部【心もとない理念、見えない戦略性】をご紹介します。

▶ 月刊誌「世界思想」のお問い合わせ・購読はこちらへ 


政権内外の「反対」退ける

 バイデン政権の外交は、対中戦略が中心である。そこで中国との戦略的競争に打ち勝つため、軍事的、外交的資源をインド・太平洋地域に集中させ、中東や欧州方面への関与を可能な限り減らしていくとみられていた。

 しかし、アメリカの関与が低くなれば、同盟国は不安になり、その隙をついてロシアなどの勢力が影響力を拡大する状況が生まれる懸念があった。現実はその懸念の通り、ウクライナ危機に世界の耳目が集まっている。

 バイデン大統領は2021年9月21日、国連総会初日に一般討論演説を行った。演説で同氏は、同盟の再構築を訴え、「我々は民主的価値観を擁護していく。それは米国という国の中核をなす考え方だ」とし、「同盟関係は米国の持続的な安全と繁栄にとって不可欠であり中心だ」と強調。そして、アフガニスタン駐留米軍の撤退については「20年間の戦争の時代の幕を引き、『外交の時代』の幕を開く」と「開き直った」のである。

 一方、アフガンからの撤退決定をめぐる政権内外の動きが次第に明らかになってきた。同じく9月21日に出版されたボブ・ウッドワード氏の著書には、バイデン氏が早期撤退に反対するブリンケン国務長官やオースチン国防長官の意見を退けていたことが記されている。また、昨年3月に開催されたNATO外相会議でも、撤退時期の決定・公表前に米軍撤退をタリバンとの交渉材料とし、当時のアフガン政府との和解につなげるよう、各国から強く求められていたことも明らかになった。しかしバイデン氏はそれらの提案を受け入れず、最終的には両長官の「賛同」を得たうえで、4月初めに軍の完全撤退を決意することになったという。

2021年9月、国連で演説するバイデン大統領

十分な事前協議なくアフガン早期撤退を決定

 英国などは期限(21年8月末)までに撤退活動を終えることは不可能として延期を最後まで求めていたという。結局、混乱の最大の原因はバイデン氏自身にあるということだ。スタッフらの進言に耳を傾けず、同盟国・友好国との事前協議も不十分のまま撤退時期を独断的に決定したのである。
さらに、米国が動いて昨年9月15日、豪州、英国、およびアメリカ合衆国の3国間の軍事同盟(AUKUS)が発足した。関連して、米国の原子力潜水艦技術を豪州に提供することが合意され、今後、対中を念頭に抑止力が高まると公表された。ところがあらかじめ豪州と結んでいた潜水艦製造契約を反故にされたと、フランスが猛反発した。
バイデン氏は国連での演説で、一度も「中国」という言葉を使わず、「我々は新冷戦を望んでいない」とわざわざ発言した。理念、準備、そして同盟の堅固さを含む「力」を示す戦略が決定的に不足しているといわねばならない。
極めつけは、21年12月9、10日と開催されたバイデン政権主導の「民主主義サミット」だ。日本や欧州主要国、さらに台湾を含む111カ国・地域が招待されオンライン形式で開催された。狙いは中国、ロシアなどの権威主義的国々に対抗して、民主主義陣営の結束を図ろうとするものだったが、残念ながら成果は不発だった。
その理由は、民主主義国と非民主主義国の区分が明確ではないことが挙げられる。「権威主義からの防衛」との理念は曖昧過ぎる。21世紀最大の問題は権威主義ではなく、共産主義・中国ではないのか。「共同声明」は出されなかった。

続きはこちらでお読みください(勝共連合ホームページ) 

この記事が気にいったら
いいね!しよう