第20代韓国大統領選挙が3月9日、投開票された。野党「国民の力」の尹錫悦氏と与党「共に民主党」の李在明氏は共に得票は1600万を超えたが、尹氏が得票率は0・7ポイント、24万7000票の僅差で勝利した。この結果は、韓国政治の対立の根深さを物語る。尹次期政権の前には多くの壁が立ちはだかっているが、新たな朝鮮半島とアジア、世界の未来が開かれることを期待したい。

尹氏、「クアッド」連携視野に

尹氏は5月10日の新政権発足に備え、「政権引き継ぎ委員会」を立ち上げた。委員長は、選挙戦最終版で一本化した「国民の党」代表・安哲秀氏。副委員長には、選対本部長を務めた権寧世国会議員が就き、公約を国政に反映させる企画委員長には選対政策本部長だった元喜龍前済州島知事が就いた。引き継ぎ委員会委員は24人以内だが、就任した委員が事実上、次期政権の要職に就くことになる。

尹氏は、当選翌日から精力的に電話で「首脳会談」を行っている。これまで、バイデン米大統領とは3月10日、岸田文雄首相とは11日、さらに英国のボリス・ジョンソン首相と14日、オーストラリアのスコット・モリソン首相と16日、インドのモディ首相と17日、と行った。ちなみに文在寅大統領は、まずトランプ米大統領(当時)、次に中国の習近平国家主席、そして安倍晋三首相(当時)という順番だった。電話会談の人選をみると、尹氏は「クアッド(米、英、豪、日)」との連携を目指しているように見える。

尹次期政権の大きな課題は国内対策だ。国会では6割近い議席を持つ野党を相手にすることになる。国会(定数300)では過半数の172議席を左派「共に民主党」が占めている。与党となる「国民の力」は110議席。思うような国政運営ができるかどうか不透明だ。

また左派団体の反発は歴代政権に比べても大きくなるだろう。韓国大統領は法案の提出権や拒否権があるが、独裁批判を恐れて国会決定を覆すことはこれまでも極めて少なかった。

電話会談した岸田首相と尹錫悦氏

破綻寸前だった米韓関係

  ロシアによるウクライナ軍事侵攻によりこれまでの国際秩序が大きく揺らいでいる。今後、中国や北朝鮮による「武力による威嚇」や「力による現状変更」の脅威が朝鮮半島に大きな影響を与える可能性がある。日米韓の結束を重視する強い政権を目指す尹錫悦次期大統領に対する期待が高まっている。

 尹次期政権は、国内対策の難しさもあり、まず外交に力を入れて実績をつくることになるだろう。何よりも重視されているのが米韓関係の「再建」である。  バイデン大統領と尹氏による10日の電話会談では、「北朝鮮の不法で不合理な行動には断固対処する」と述べ、文政権で揺らいだ「米韓同盟の再建」の意思を明確にした。

 尹氏は公約に高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」追加配備を掲げた。在韓米軍にTHAAD配備を決定したのが2016年。それから5年、これまで異様な状況が続いていた。運用を担う米軍将兵はコンテナなどで寝起きし、まともな食糧が滞ることさえあったという。資材の搬入を妨害する反対団体を文在寅政権が半ば野放しにしてきたからである。昨年訪韓したオースチン米国防長官は「容認できない」と強い不満を示すほどだった。

 尹氏を支え外交政策をつくる立場の人たちは、日韓関係の改善に安全保障上の利益を見出している。尹氏は、北朝鮮より中国の脅威を選挙戦で訴えた。次期政権の安全保障構造は、対中強硬路線を前提に作られる。何よりもまず自前の軍事力を強化する。次にこれを補完する米韓同盟という位置づけだ。

 このように、米韓同盟を重視する尹氏らにとって日韓関係改善は必須である。日本が極東における米国のもう一つの重要な同盟国であり、朝鮮半島有事における米軍の活動に重要な役割を果たすことになる在日米軍の基地を持っている。日韓関係の重要性はこの文脈で語られているのである。

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