THAAD運用開始も、経費負担で韓国世論が混乱と反発

  在韓米軍のTHAAD(高高度地域防衛ミサイルシステム)の運用が開始された。韓国国防省報道官は5月2日、定例記者会見で「現在配置された装備を活用し、北朝鮮の核ミサイル脅威に対する初期能力を発揮できる状態だ」と述べた。配備場所は慶尚北道星州郡で発射台は2基である。最終的には発射台を6基、迎撃用ミサイル48発を配備する計画である。

 ところが経費負担をめぐって韓国内に混乱と米国への反発が一時広がった。配備は4月26日に米韓の合意に基づいて行われたが、機材搬入後にトランプ大統領やマクマスター米大統領補佐官らによるTHAADの費用負担の要求や再交渉発言が伝えられたからである。トランプ政権による韓国大統領選挙への牽制との見方さえ登場した。切っ掛けは、4月27日にトランプ大統領がロイターとのインタビューで「経費は韓国が負担すべきと語った」ことにある。

北朝鮮のノドンミサイルを迎撃できるのはTHAADだけ

 しかし韓国政府は30日、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)と金寛鎮国家安全保障室長が電話会談し、米国が費用10億ドルを負担することを再確認したことを明らかにした。マクマスター補佐官は電話で、大統領の発言について、同盟国の防衛費の負担配分に関する米世論を踏まえた一般論を語っただけだと説明したという。

 THAAD配備の経緯について再確認しておきたい。きっかけは2014年3月、北朝鮮がノドンを高く打ち上げ、距離を縮める(ロフテッド軌道)試射を実施したことだった。韓国内が標的になり、かつ落下速度が速く、現在配備されているパトリオット(P3C)では迎撃できない。その後、同年6月に在韓米軍が米国防総省に新たな脅威に対応できるTHAAD配備を要求している。THAADは高高度の40~150kmで迎撃でき、超高速の落下速度にも適応できる能力を持っている。

前倒しの運用開始は韓国大統領選挙の影響を考慮か

 配備地として当初は平沢(ピョンテク、ソウルの近く)が候補地として挙がった。しかし物資や増援軍の集結地となる倭館(ウェグァン)基地の防衛も重視することとなり、近くの星州郡の用地に決まったのである。

 当初は年末までの配備で合意していたが、北朝鮮の脅威の進展状況や、韓国大統領選で配備に慎重な候補が優勢と見られていることから大幅に前倒しとなった。年内に追加配備が行われ、4基を加えて6基とする計画である。

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