「世界思想」5月号を刊行しました。今号の特集は「特集ウクライナ危機と日本の防衛 」です。
ここでは特集記事の一部【国連の機能不全補う地域安保体制構築を】をご紹介します。

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高まる国連改革の声

 ウクライナ戦争で、主権国家に対するあからさまな侵略行為という、重大な国連憲章違反を前にして、安保理は非難決議すら採択できなかった。その理由は、まさに拒否権を持つ国家が当事者だったからだ。このままでは中国が台湾、尖閣に侵攻しても同様のことが起こるだろう。

 3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、日本の国会議員に向けた演説の中で国連改革、特に安保理改革の必要性を訴えた。国連の機能不全が露わになる中、日本政府首脳からも「国連改革」の言葉が頻繁に聞かれるようになった。13日の自民党大会では岸田文雄首相が、「国連改革、そして安保理改革の実現に全力を挙げる」と述べ、27日のアフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合でも、林芳正外相が早急な国連改革を訴えた。

 31日に開催された自民党の外交部会などの合同会議では、安保理改革に向けた提言を4月中にも取りまとめる方針が決定された。

3月24日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でオンラインを通じ演説した

機能しない「集団安全保障」

 第2次大戦を経て成立した国際連合の最大の目的は戦争の抑止だ。それぞれ自衛権を持つ国同士が協力して侵略に立ち向かう権利が「集団的自衛権」だが、国連が目指しているのは「集団安全保障」である。

 具体的には、武力行使による紛争解決を否定し、不当に力を行使した国家に対して、国際社会が共同して制裁を実行したり、軍隊を派遣するなどして、侵略を阻止する仕組みである。

 その中核を担うのが安保理であり、さらには安保理の決定により、加盟国の軍隊で組織される国連軍である。  しかしながら、実際に「国連軍」が組織されたのは、1950年、朝鮮戦争の時だけだ。北朝鮮の侵略行為に対して安保理が国連軍の派遣を決定し、米軍を中核に計16カ国の軍隊が参加。韓国政府が釜山まで追い詰められていた状態から、最終的には38度線の休戦ラインまで北朝鮮軍(および「義勇軍」と称した中国人民解放軍)を押し戻した。この時、国連軍派遣が可能になったのは、拒否権を持つソ連が欠席していたからである。

 冷戦体制のもとでは、西側の米英仏、東側の中ソが互いに拒否権を行使しあい、重要事項であるほど安保理は無力となった。今また、中露が結束を強めて既存秩序に挑戦する中、安保理の抱える矛盾が露わになっている。

 実際には、2014年のクリミア併合の時にも、常任理事国ロシアの「力による現状変更」が問題視されていた。 安保理改革がない限り、今後も同様の事態は繰り返されるだろう。

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